『クレイグ・ライト. イェール大学人気講義 天才 ~その「隠れた習慣」を解き明かす』『天才とは』『読書感想』

今回の著書は天才の性質とはどんなものか、それらはどうすれば養えるのかをテーマに掘り下げていく内容だった。

本書の著者はイエール大学で「天才の資質探究」というコースの教鞭を取っている人物だ。

本書はそんな著者が天才が持っている隠れた習慣について書いた本である。

ちなみに筆者が教えているコースを取る前の生徒の3/4人ほどが天才にりたいと手を挙げていたのだが

コースの終わりには天才になりたいと手をあげる生徒は1/4ほどになっていたという。

天才とはなんだろうか。

天才とはなんだろうか?

天才について議論をする際、この話は避けて通れない問題である。

天才という言葉の意味は時代と共に変化してきた。

時代により求められていたもの

歴史の変化に従い新しく生まれてきたものもある。

本書で筆者は天才についてこういっている。

「天才は、誰も射ることのできない的を射る。 天才は、誰にも見えない的を射る」

天才が誰も射ることのできない的をいるとはどういう意味なのだろうか。

本書では欧米の天才とは

カントから始まり、徹底的な個人主義と、自力での成功への信仰の象徴的なところがあると説明する。

日本にも同じような見解があると思わないだろうか。

しかし、そうはいっても人の価値観は時代と共に変わり

人が求めているもの、人が憧れるものは変わる。

本書では

天才とは、精神力が並外れていて、その人独自の業績や見解が、文化や時代を超えて、良くも悪くも社会を大きく変革する人

と定義していた。

この定義によると天才と有名であることが必ずしも同じでないことがわかる。

世間一般にいう天才とはただの有名人であることが多い。

まずはその中からパフォーマーを外すことが、天才を見極める最初のステップになると本書は説明している。

本書は14の章により構成されている。

  • 仕事への姿勢(Lesson1)
  • 立ち直る力(Lesson2)
  • 独創性(Lesson3)
  • 子どものような想像力(Lesson4)
  • 飽くなき好奇心(Lesson5)
  • 情熱(Lesson6)
  • クリエイティブな不適応(Lesson7)
  • 反逆精神(Lesson8)
  • 越境思考(Lesson9)
  • 通常とは正反対の行動(Lesson10)
  • 準備(Lesson11)
  • 執念(Lesson12)
  • 気晴らし(Lesson13)
  • 集中(Lesson14)

今回は解説(要約)として

  • 天才とは

天才の習慣

  • 天才の特徴

の2部構成で行こうと思う。

タイトルこそ少ないが本の内容を網羅してまとめた。

それではいこう。

天才と遺伝の関係

天才と遺伝には関係がるのだろうか。

もし親が天才ならその子もまた天才となるのだろうか。

答えはNOだ

天才とは突発的に生まれると本書はいう。

例えば、二十世紀最高の競走馬といわれたセクリタレアトの血統はいいと言えるだろう。

しかし類を見ないほど凄いわけではない。

またセクリタレアトの子孫がずば抜けた能力を受け継ぐこともなかった。

また世界には天才を生み出そうという試みがあった。

やがて優生学と呼ばれるものへと変化したものだ。

しかしそこでも天才を生み出すことはできなかった。

才能は遺伝するかもしれない、

しかし天才は違うと本書はいう。

天才は突然現れる。

本書ではそのカラクリが人の遺伝子の表現形に関係があるのではと説いている。

表現形とは遺伝子の組み合わせと環境の相互作用により”目に見える形で現れる”生物的な特徴のことだ。

その中で表現として、知性や立ち直る力、好奇心、洞察力ある思考、少しどころではない強迫的行動から、ランダムに出現するものに見えると、本書にはある。

先天的に備わっていると考えられる遺伝子だが、遺伝子自体は設計図のようなものである。

そしてその設計図にある性質を表すかは、エピジェネティクスと呼ばれる現代科学に関係しているといわれている。

エピジェネティクスとは遺伝子の塩基配列は同じなのに遺伝子の発現が変わる現象のことだ。

塩基配列以外の要因によって遺伝子のオン、オフを決める仕組みである。

受精卵はエピジェネティクスが消去され万能性を持った細胞(すべての種類の細胞になることができる細胞)である。

この性質応用しているのが、クローン細胞やiPS細胞だ。

これらはエピジェネティクスによる制限を上書きすることで、細胞の性質を初期化できる仕組みを使っている。

つまり、人の遺伝子は必ずしも生まれた時に0から100まで全てを決めるわけではないのだ。

環境から影響を受ける。

実際に世の中で天才と言われるような偉業を成した人が全員、小さい頃から目まぐるしい成果を収めていたわけではない。

天才はいきなり天才になるわけではない。

長年の積み重ねが天才を作り上げるのだ。

IQと天才の間には相関関係があるのか

遺伝ともう一つよく話題に上がるのがIQテストだろう。

しかしIQは必ずしも天才であることと、強い相関関係を持っているわけではない。

ルイス・ターマンたちがスタンフォードで1920年から1990年におこなた「天才テスト」ではIQ135を超える若者が1500人ほどいた。

しかし1人もノーベル賞受賞者はでず。ピューリッツァー賞受賞者も1人も出なかった。ピカソも1人も出なかった

クレイグ・ライト. イェール大学人気講義 天才 ~その「隠れた習慣」を解き明かす

と本書は述べている。

もちろん、QIテストやSATで高い成績を収めた人がのちに偉業を成し遂げる子も多々ある。

しかしIQテストは想像力を図るものではない。

テストでは、テストの問題が求める答えを見つけ出す思考が重要視されている。

白いキャンバスにどんな絵を描くかといった創造性とは違うのだ。

実際にIQテストやASTと交響曲を作り上げることの間に相関関係を見つけ出した研究は存在しない。

また天才という概念は社会の流れをとてもよく表す。

例えば、政治家として名を挙げてきた女性は歴史上3パーセントほどであり、サイエンスに限ると1パーセントたらずになる。

社会に存在する様々なステレオタイプが明確に男女間の天才、才能の発掘にさを作っていることは間違いない。

筆者は自身が教鞭を取る中で、クラスの議論に熱心に参加するのは主に「指導者的立場の男性」で、女性は最初、黙って成り行きを眺め、ゲームがどのように運ぶかを品定めしていることに気づいたといういう。

また女性に対してのステレオタイプは女性自身が持っていることもある。

例えば男性の45パーセントは女性に対して偏見を持っているという調査があるが

実は男性だけでなく、女性の28パーセントも女性のリーダに対して偏見を持っていたという。

ジェンダーバイアスはとても大きく天才の発掘に関わっている。

天才と言える女性が1人しかいないとき、天才と言える男性が10人いたらそこにはとてつも無い壁があることが想像できるだろう。

さらに問題なのは、男女平等が実現された時代がないということである。

しかし、遺伝による性別の違いだけで説明できるほど小さな違いでもない。

そして天才の発現はIQやテストだけでは計りきれない多数の要因がある。

これは裏を返せば天才の発現に環境が如何に大切かを象徴している可能性もあるのだ。

天才は努力によりつくらるのか?

努力は天才性を開花どれほど関与しているのだろうか。

天才と呼ばれる人たちの多くは、異常とも呼べる努力をしていることが多い。

むしろ強迫観念に駆られているとも言えるかもしれない。

例えば、体操選手であったシモーネ・バイルズは生まれき、小柄で、筋肉質であった。

体操競技において優位といえる先天性を獲得していたのである。

そ彼女はの強さをいかし、前例がない体操競技の技を新たに作り上げた。

しかし彼女はそこに到達するために、とてつもない量の努力と練習をしたのである。

そのとてつもない量の努力、練習なしでは彼女はその天才性を花開かせることはなかった。

天才は努力の天才でもあるのだろうか。

本書は努力について

練習は結果であり最初のきっかけは天性の優れた才能である

と説いている。

天才は偶然と奇跡の重なりによって生まれた存在なのかもしれない。

立ち直る姿勢

神童は天才なのか

世界には神童と呼ばれる子供達がいる。

彼らは天才なのだろうか。

実のところそうとは言い切れないらしいのだ。

神童は早熟である、しかし革新的な変革を確実にもたらすというわけではない。

もちろん早熟な天才もいる。

モーツアルトなどは早熟で天才だった。

ただ、モーツアルトにも天才になるきっかけがあった。

22歳になったモーツァルトはパリで、悲惨な状態にあった。

ひとりぼっちになり、お金もほとんどなく、仕事はなく、恋人もおらず、母もいない。

いるのは批判的な父だけだったのだ。

だがモーツァルトの場合、この苦難の日々が彼の人生を決定づけることとなった。  彼は他人の言葉をあまり信用せず、自身の恵まれすぎた才能を信じることを学んだ。

そして彼は彼自身で「父さん」やその他の人がいなくても、やっていけることに気づいたのだ。

モーツアルトは自身によって「神童の幻覚」を脱ししたのだ。

しかし本書では「たいていの場合、若者の才能に輝かしい未来を見ようとすると、うぬぼれが強くなり、希望が天まで膨らんで、がっかりすることになる危険性がある」

としている。

そして一番の問題が完璧に復元できることと、新たなものを生み出す力は同じではないということだ。

読者に小さい頃、ピアノをしていた方はいるだろうか。

完璧にピアノを弾くということと、新たに音楽を作り出すということは、全く違うものなのである。

また以前の「天才とは」の章で述べた通り周りの環境が大きな影響を天才に与えていることは間違いない。

自身の周りにある環境をいかに跳ね除け、自身を信じることができるか。

また天才と言われる数多くの人は死んだ後にその天才性を発見されることが多々ある。

彼らはなぜ人々に石を投げられながらも自身の道を歩み続けることができたのだろうか。

天才と精神障害

天才と精神障害の間には高い相関関係がある。

有名な画家のゴッホは自身が精神錯乱を起こすことを自覚していた。

実際に手紙で自分がおかしくなったら精神病院に入れてくれと甥に頼んでいる。

そして同時に、彼に取って仕事(絵を描くこと)のみが自身を保つ方法であるとも書いているのだ。

彼にとって精神世界は切っても切り離せないものだったのだろう。

自身のコントロールの外にあるカオスとどう対峙するのかに命をかけていたのかもしれない。

天才の才能の一つに、空想の世界に飛んでいき戻ってくることができることがある。

ヴァージニア・ウルフもそうだった。

彼女は「経験から言って、狂うのは素晴らしいことで、請け合うけど、ばかにできないものよ。その溶岩のなかで、今でも私は書いていることの大半を見つけてるの」と述べている。

しかし同時に躁状態から平静へ下がることについて、彼女はかつてこんなことを書いている。

「自分や、私の輝き、才能、魅力、(そして)美しさが縮小して消えていくのが見えた。それは実際、どちらかと言えばみすぼらしくて、口うるさく、醜い無能な年老いた女性で、うぬぼれが強くて、おしゃべり好きな役立たずだった

クレイグ・ライト. イェール大学人気講義 天才 ~その「隠れた習慣」を解き明かす

ある作家もフロイト精神分析学の「談話療法」を6年間受けた。

その影響が作品に及んだ。

「何を描くにしても、アイデアが出てこないの。すべて、口から出るようになったから」と彼女は語った。

クレイグ・ライト. イェール大学人気講義 天才 ~その「隠れた習慣」を解き明かす

彼ら彼女らは、無視できない感情、色形を持っている。

それらをどうにかして表現しようとしていたのかもしれない。

生きる上での選択肢を全て、自身の表現に使うことで人生を歩んでいると、捉えることもできる。

また時にその行動は、それは自分を認めてほしいという欲求から生まれることもある。

ダーウィンはこういっている。

[観察能力より]はるかに重要なのは、自然科学への私の愛がいつも変わらぬものであり、また熱烈なものだったということである。

とはいっても、この純粋な愛は、博物学者仲間の尊敬をかちえたいという私の野心によっておおいに助長されたものであった

クレイグ・ライト. イェール大学人気講義 天才 ~その「隠れた習慣」を解き明かす

天才と集中力の関係性

ここからは天才の集中力について書いていきたい。

本書は天才と呼ばれう人々の集中力について以下のように語っている。

「天才とは、自己の関心、自己の意欲、自己の目的をすっかり無視して、つまり自己の一身をしばしの間まったく放棄する能力のことである」

クレイグ・ライト. イェール大学人気講義 天才 ~その「隠れた習慣」を解き明かす

ニュートンはケンブリッジ大学トリニティ・カレッジの最初は学生として、のちには特別研究員として、何日も続けて自分の部屋に閉じこもり、何かの問題に取り憑かれていた。

その間ほとんど食べず、それでも通常は「フロー」を壊さぬよう、立って考え事をしていたと本書にはる。

いわゆる天才とはフロー状態の中に潜んでいるのかもしれない。

そして天才の発想の広さには集中力以外にも特徴がある。

天才は往々にして人格者ではない

天才的な想像力には狂気が見え隠れする。

ピカソのの恋人は時に殴られ、時にタバコを顔に押し付けられた。

ピカソの恋人であったマリー・テレーズ・ウォルターは

「彼はまず女性を犯すの……で、それから仕事に取りかかる。それは私のこともあれば、ほかの誰かのこともあって、いつもそんなだったわ」と振り替えていると

本書にある。

ピカソは自身が凶暴であることを知っていた。

また観衆がその凶暴性に心を躍らせていることも知っていたい。

しかしピカソ自身は他人を気にしてはいなかった。

「わたしにとって、ほんとうに大切な人間は一人もいない。わたしにとって、他人はこの陽の光に舞う埃みたいなものだ。 箒 でひと掃きすれば消えてしまう」

ピカソはそういっている。

ピカソは自身の暴力性と恋人の反応などにより作品のインスピレーションを得ていたのだ。

天才はリラックスと夢の中に

ただ、有難いことに天才のひらめきには、普通の人もまねをできるものがある。

ひらめきの瞬間はリラックスしている時に、生まれるものであるという点だ。

アルキメデスは入浴している時に、エウレカ(わかった)と叫んだことは有名な話なのではないだろうか。

実際にシャワーを浴びているときに生まれるアイディアはとても多い。

もう一つインスピレーションい大きな力を持っているのが睡眠と夢だ。

多くの作家がベッドのそばにノートとペンを置いている。

科学者は創造性が増加する理由は神経伝達物質に関係しているといっている。

神経伝達物質とは電気化学的な刺激因子または抑制因子で、体内の細胞から細胞へ刺激を伝達する物質だ。

起きているときは、ノルアドレナリンという化学物質が脳内を流れて、活動するために脳を動かしている。

これは「行動を誘発する」ホルモンだ。

アドレナリンが体内で果たす機能に似た働きをする。

ところがレム睡眠(夢を見ている時)中は、ノルアドレナリンが消滅して、「行動を鎮静化する」神経伝達物質と言われているアセチルコリンが大量に分泌されるという。

そのため脳は休息を開始すると、自由に連想を飛び回らせられるようになるのだ。

本書では朝に20分をスマホなどを触らず、楽しむことを推薦している。

目覚めてから頭が完全に化学的に起きた状態に戻るには、 20 分ほどのタイムラグが存在するということだ。

この「薄ぼんやり」状態の時間帯、脳の中ではアイデアがまだ自由に飛び交っている状態にある。

黄金タイムをスクリーンを眺めていては勿体無いと本書はいう。

天才は年月をかけて現れる

多くの天才と呼ばれる人は、毎日起きるたびに世界を変えるアイデアを作り上げているわけではない。

多くの場合、深い集中力と、長い年月をかけて作り上げた土台の上に、ある時アイデアが降ってくるのだ。

日々の積み重ねが天才を作る。

また多くの天才は突然現れた「一度きりの現象」である。

いきなり、何の脈略もなく現れ消えていく。

人生は何をやってもいい。

天才たちはその存在でそれを体現した人物なのではないのだろうかと、今回本書を読んでいて思った。

今回は、「クレイグ・ライト. イェール大学人気講義 天才 ~その「隠れた習慣」を解き明かす」についての読書感想を書かせていただきました。

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